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「いじめ」なんて単純な話じゃない|かがみの孤城【book records】

実咲
実咲
こんにちは、実咲(@twi_339)です

「book records」は、読書が趣味のわたしが、読んだ本を紹介する連載記事。

3冊目は「かがみの孤城」です。

本の概要

著者は辻村深月さん。
最近だと「ドラえもん のび太の月面探査記(2019年)」の脚本を担当されたことが話題になりました。

2018年本屋大賞1位の作品です。
刊行記念のインタビューが公開されていました。

あらすじ

学校での居場所をなくし、部屋に閉じこもっているこころ。
ある日、部屋の鏡が突然光り、くぐり抜けられるように。
鏡のその先には豪華な城のような建物。そして、こころと似たような境遇をもつ7人の子供がいた。

感想【ネタバレあり】

この作品に関してはネタバレなしでは語れないので、普段よりネタバレが多いです。
ご注意ください!

丁寧に描かれる描写

辻村深月さんの作品を読むのは、これが初めてなのですが、難しいテーマへの描写力に驚きました。

「いじめ」というのは一括りにされがちだけど千差万別で、人によっては「喧嘩」だと片付けられることもあります。
本人にしか辛さはわからない。その辛さを描く言葉選びがしっくりきました。

学校に「行かない」のではなく「行けない」。
ひどい怒号や罵倒の言葉に、自分が悪いと思い込んでしまう。
「いじられキャラ」だからといって、なんでも許されてしまうような気持ちになる。

子供を持つ親世代の方にも、読んでほしいと思う作品でした。

実咲
実咲
わたしは親ではありませんが、自分の中学時代を思い出すと誰も他人事ではない話だと思います

学校という狭い世界

中学生や高校生の頃って、学校という世界しか知らない子供が多いと思います。

学校という世界の中に、学年という括りがあり、そのなかでクラスという箱に分けられる。
狭いクラスの箱で、1日の時間の大部分を過ごします。

クラスの箱の中に、居場所を作れない子もいる。
わたしは、なんとか箱の中に居場所をつくることができました。
でも、目立つ子の言動に肩身が狭い思いをしたこともあります。少し我慢したこともあります。
大人になれば、たった数年のことだと思うけれど、当時は本当にお腹が痛くなる日もあった。

「人生は学校だけでないこと」「違う選択肢もあること」
それって子供はなかなか気づけないと思います。

実咲
実咲
教えてあげられる大人がもっと増えるといいと思うし、自分もそうなりたい

城で7人と過ごした時間

7人は集められた城の中で、少しずつ歩み寄るし、そこに絆のようなものも生まれます。

1年たらずという少ない期間ではありますが、7人はそれぞれ心も成長したと感じました。
たとえ、記憶が残らなくても。

恐らくリオンだけは記憶が残っているのだと思いますが、アキの描写から考えて他の6人ははっきりとは覚えてなさそう。
それでも、あの城での出来事はきっと心のどこかには残っている。

もしかしたら、あのまま学校には行けないかもしれないけれど、他の選択肢もあることにきっと気づけるはず。
あの城がなかったら、アキは喜多嶋先生として、こころに手を差し伸べることはなかったと思います。

実咲
実咲
記憶がなくとも、城で過ごした時間で起きた心の変化はそのまま残っていてほしいです

個人的には、スバルがマサムネに「このゲーム作ったの友達ってちゃんと言えるように」”ゲームを作る人”を目指すことがぐっときました。
物語の中盤で、あるゲームプロデューザーの名前が出て来るのですが、胸が熱くなりました。
マサムネが自慢していた「友達の作ったゲーム」は、嘘ではなかったんです。

誰のための城と鍵なのか

実咲
実咲
物語が進むにつれて・・・というか、体感的には最後に一気に謎が解けます

1人だけ雪科第五中学の生徒ではなく、それどころか海外に住んでいて、学校にも行っているリオン。
この物語の主人公はこころですが、リオンの存在がかなり異質だったことに気づきます。

リオンのために作られた城だと気付いた時、陳腐な言葉にはなりますが目頭が熱くなりました。
城が閉まる3月30日が、命日。
7人なのは、よくリオンに読み聞かせていた7匹の子豚から。
城は、病室にあったドールハウス。
最後のリオンの推測通りであれば、城や願いを叶える鍵をつくりだした姉の想いはとても強かった。

表紙から、少しの気味悪さを感じる物語ではありましたが、謎が解けるとすごくあたたかい気持ちになりました。
そして、オオカミ様の存在がとても寂しく愛おしい存在だと思えるようになりました。

実咲
実咲
最後は、仮面を外して笑ってくれているといいな、と思います。

まとめ

ボリュームのある物語なのですが、2日で一気読みしてしまいました。
次々と読み進めたくなる一冊です。
評判通り、すごく感動しました。ぐっと心臓が掴まれたような感覚です。

誰の中学時代にも、少しはひっかかることがあるのではないかと思います。
リアルで、ありふれてしまっている「いじめ」という問題。
簡単に一言で片付けずに、丁寧に向き合うこと。
それが大人にできることなんじゃないかと思います。