こんにちは、misaki(@twi_339)です。
読書が趣味のわたしが、読んだ本・好きな本を紹介する「わたしの本棚」。
ちょっと描写がグロテスクな本が読みたい、と思い手に取りました。
結果、すごく好みの作品でした!
Contents
「GOTH 夜の章・僕の章」の紹介
「GOTH 夜の章」「GOTH 僕の章
」は、「GOTH リストカット事件
」を2冊に分けた文庫本です。
さらに「GOTH 番外編」もあり、番外編も含めた合本「GOTH 3冊合本版
」もKindleで販売されています。
第三回本格ミステリ大賞受賞作(2003年)。
各3作の短編が収録されています。
グロテスクな描写が多いので、苦手な人は苦手だと思います…
2008年には本郷奏多さん主演で、オリジナルストーリーが映画化されています。
あらすじ
人間の暗黒面に強く惹かれる「僕」は、猟奇殺人事件の記事を調べたり、殺人者に興味を持っているが、普段の生活では悟られないようにしている。
「僕」のクラスメイト・森野夜も同じく人間の暗黒面に惹かれる無表情な美少女。
ふたりは猟奇的な殺人事件にいくつも関わることになる。
「GOTH 夜の章・僕の章」の感想(ネタバレあり)
叙述トリックが多い作品なので、全く知らずに読むのをおすすめします!
(こんな記事を書いておいて何ですが…)
ぐっと引き込まれる「暗黒系」
「GOTH 夜の章」の最初の1編。
「GOTH」という作品の雰囲気を理解し、引き込まれます。
森野夜が拾ったある手帳から、世間を騒がせている猟奇殺人に関わることになります。
しかも、二人は自ら淡々と歩み寄っていくのです。
大多数の人たちは「殺人犯のものかもしれない手帳を見つけた」「次の被害者を見に行こう」とはならないと思います。
でも不思議とふたりの気持ちは、わからなくもないのです。
“死”はほとんどの人間が恐れるもの。
でも決して避けられないもの。
だからこそ惹きつけられる、不気味な何かがあるのではないでしょうか。
「死とはなんだろう?」と考えた人も多いのではないかと思います。
「僕」と森野夜はきっと、その死に対する探究心が人より強いのではないかと感じました。
「暗黒系」は、登場人物ふたりの人とは違う感性を読者に示している気がします。
まさかの如実トリックを用いた「犬」
「GOTH 夜の章」の2編目。
GOTHのなかで一番驚いたかもしれません。
言葉を選ばないのであれば、「GOTH」は「意味がわかると怖い話」に似ていると思います。
「意味がわかると怖い話」も如実トリックを用いているからだと思いますが…
犬の連れ去り事件が発生し、「僕」はその犯人を追います。
「暗黒系」に比べると軽い内容に感じますが…想像してしまうと、こちらもキツイです。
犯人目線の語りが多く、読み手は勝手に犯人は人間だと思ってしまう。
そこから如実トリックは始まっているんです!
これ以上はすべてのネタバレになりそうなので、ぜひ読んでいただきたいです。
森野夜という少女の「記憶」
「GOTH 夜の章」の3編目。最後のお話です。
登場人物のひとり・森野夜にフォーカスを当てています。
森野夜は不眠症になると、眠りにつくため首に紐を巻きつけて目を閉じる。
その原因は、過去のある事件だった。
結末は「こういう話どこかで見たような…」という感じ。
読み進めているうちに、「もしかして…」と思いつつも驚きがなかった訳ではないです。
わたしは驚きよりも、「森野夜」という人間を知れて嬉しいような気持ちになりました。
森野夜が死に惹きつけられる理由が、この話を読むとわかった気がします。
「僕」異常性が浮き出る「リストカット事件」
タイトル通り、手が切り落とされる事件が起こる、「GOTH 僕の章」の最初の1編です。
文庫化される前には表題になっています。
その理由も理由と言っていいのか…
一言で言うべきではないと思いますが…一般的にサイコパスと言われる人間だと思います。
その犯人に恐れなく近づき、さらに自分の計画通りに動かそうとする「僕」の異常性が感じられました。
そもそも猟奇殺人犯に自ら近づくことが異常なのですが…
最後の数ページで、「僕」の計画が淡々と語られて、背筋がぞわっとしました。
“死”の恐怖を唯一感じた「土」
人物の如実トリックがうまいんだなと、この時点で気づきました。
「GOTH 僕の章」の2編目です。
人を生きたまま棺に入れ、埋葬することに取り憑かれた男。
彼は次に「森野夜」の生徒手帳を持った少女を棺に入れます。
「GOTH 僕の章」は異常な趣味嗜好をもつ殺人犯が多いと言う印象。
「僕」に焦点した一冊なので、「僕」がそちら側の素質を秘めているということなのかもしれません。
作中の「埋めたくて埋めてしまった」の言葉が、自分の欲に逆らえない自制心の異常な弱さを感じます。
そういう欲があっても、実際に行動してしまう人間は少ない。
ただ、この犯人の男はそれなりの常識を持ち合わせているようでしたが。
最後の数行で、こちらも「意味がわかると怖い話」のような薄ら寒さを感じました。
それと同時に、唯一“死に対する恐怖”を感じることができた話でした。
「僕」の名前が明かされる「声」
「GOTH 僕の章」最後の話です。
廃病棟で起こった女性惨殺事件。
被害者の妹は、その事件の犯人だと名乗る少年からカセットテープを渡される。
てっきり、「僕」が殺す側の人間として動いたのかと思いました。
本編の最後だし、そう言う終わり方なら後味悪いな…でもおかしくはないかも…とか。
わたしの推理は、まるっきり裏切られることになるんですが(笑)
これまで全く語られない「僕」の名前が明かされます。
森野夜も「僕」の名前を呼びますが、そのおかげで彼らがどこにでもいる高校生なんだと思い出しました。
まとめ
グロテスクな表現も多く、胃のあたりが気持ち悪くなることもありました。
ですが、また読みたいと思いました…!
アニメ「PSYCHO-PASS」がすきな人なら、すきなんじゃないかなと思います。
作者の乙一さんの作品が他にも気になりました。
でも…しばらくはいいかな…と(笑)
半年後ぐらいにまた読みたいですね。
短編ですし、総ページも500ないので読みやすいと思います!
グロテスクな描写が大丈夫な方には、おすすめします!